■ 累計130万部超の大長編ライトノベルをサウンド化 !!
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■ AHEADに寄せて
それでも“唐突に鳴らされた”と思うほどの衝撃を受けるということはどういうことかというと、どうもこうもない。ヤバイくらいにカッコ良かったということである。
あれはまだ、セミの声がエレクトリックに鳴り響いていたある夏の日、マスターアップされたばかりの「Get Set」のサンプル音源を聴いた。思えば不意打ちだったのは、「これは『終わりのクロニクル』の“仮想アニソン”だ」という前情報。それを鵜飲みにしていたのが悪かった。いや、良かったのか? とにかく、少なくともアニソンを受け入れる体制としては十全の状態で、そのできたてホヤホヤな音源と対峙したわけだ。 いきなり話と違うじゃないか。そう思った。だって、こんなアニソンねぇよ。待て、巻き戻せ。そもそも“仮想アニソン”ってなんだよ。しまった、はじめから勝負になってない。とまれ!……そんなことを5秒くらいの刹那に思い、結局止めずに、「Get Set」を最後の一滴まで味わってやった。
あれから約2ヵ月後の、今度はスズムシだかコオロギがエレクトリックに鳴いていたある日。『終わりのクロニクル』の“仮想サントラ”と呼べるような、『AHEAD』の音源が筆者の手元に届いた。今回はかなり冷静に、しかし臨戦態勢のまま、むさぼるように聴いた。 聞き覚えのあるクリスマスソングをフィーチャーした「始まりの詩~清しこの夜~」。なるほど、これは新庄の鼻歌か。ならば……ということで、優雅な調べから一転、またもや唐突に鳴らされた「regalia」である。心拍数を引き上げるように打たれるキックの利いた性急なビート。叙情的な色味を帯びた三澤秋の歌声が立ち上がるのを待つように、進撃を告げるシグナルが鳴り響く。光のようなサウンドがいくつも走り、束になり、それが拡散と収斂を繰り返すようにメロディに抑揚が生まれていく。圧倒的に新しく、物語に引き込む説得力も圧倒的。 2人のコラボレーションは今に始まったことではないが、この楽曲でさらに一段上のレベルに到達したようだ。それは9曲目「soar」のテクニカルなドラムンベース・トラックと絡み合う、ポップな三澤秋の歌声との関係性にも言えるだろう。歌と音は何よりも能弁である。
歌モノでいえば、6曲目の「ウソ」。茶太の濡れたような声に宿る切なさを増幅させる、繊細に組み上げられたサウンド・プロダクションが素晴らしい。R&Bが本質的に抱える荒々しさや猥雑さを、透明感あふれるサウンド・スケープで優しく包み込んでいる。 しかし当然のこと、このアルバムは澄み切った美しい楽曲ばかりではない。8曲目「白雷の疾風」で聴ける暴力的なまでのグルーヴ感は、フリークアウトしたバンド系サイケ・トランスの一派にも見られる危険な攻撃性がある。これは最高のダンス・チューンとしても機能してくれそうだ。 そして。落涙を音にしたかのようなピアノの美しい旋律から始まる11曲目「理由」では、茶太の歌声に心惹かれた瞬間、静かに燃えるような激情が青白いビートとなって駆け抜け、物語のページは唐突な印象のまま閉じられた。本当に悔しいけど、最後まで徹底してカッコイイ。
『終わりのクロニクル』という、長大かつ複雑な物語をアニメ化する勇気が、今のアニメ業界にあるかは正直わからない。しかし、取り敢えずはサントラにあたるような最強の音源が、万全の態勢で待ち構えているこの状況、面白すぎはしないだろうか? 『AHEAD』という作品が音楽的に優れた作品で、尚且つ『終わりのクロニクル』の読者にとっては最高の演出装置であることに間違いはない。しかし同時に、その存在そのものがアンビバレンスな要素を抱えているからこそ、なんとも抗しがたい魅力が宿っているのもまた、事実である。こんなにもいちいち面白いアルバム、聴かなきゃ人生の損失だ。と捨て台詞を吐いて、この原稿を締めくくりたい。
―――― Rioさん、ありがとうね。 |
■ 終わりのクロニクル イメージアルバム制作にあたり
緻密な計算の元に練り上げられてる独特の世界観、その世界でまさに “生きている” 敵・味方問わない魅力的な登場人物、劇中に鏤められた謎・伏線が一気に収束していく怒涛の物語……と、終クロの魅力を語り出したら止まらない訳ですが、何より僕が魅了されたのは、シリーズタイトルにもある「AHEADシリーズ」という名の通り、「前に進む」という徹底したメッセージを、作品を構成する「全て」から強く受けたからです。 変えようのない過去に戸惑い、先の見えない未来に躊躇い、全てを背負うという業に迷いながら、それでも逃げ出すことなく強く一歩を踏み出す彼らの生き方、世界の在り方、物語は、読み終えてもなお、胸を衝き抜ける気持ちよさが残り、同時に現実で生きている自分や今の世界を重ねて、色々と考えさせられる奥深さを感じさせて…… 作品に恋をし、作品が語るメッセージに惚れる、というのは正にこういうことを言うんだと思います。 そんな強い力を持った作品に、真っ向から向き合う今回のプロジェクトは、とてもやりがいがあり、嬉しい事ではありますが、同時に怖いことでもあります。文字媒体の作品を元にイメージを膨らませて、目で見えない形の「音」にするというのは、まさに前述にある「先の見えない未来」に近いものがあり、自分達の感性だけを信じて、日々手探りの連続だからです。
文字通り、幅広い作中の概念世界や物語のイメージをメロディアスに表現してくれるサウンドプロデューサーの onokenさん、美しく伸びのある歌声と、全竜交渉部隊の面々に対し、皆が感じているであろう「芯」を捉えた詞で、歌を表現してくれるヴォーカリストの三澤さん、儚く切ないながらも、どこか強さを感じさせる歌声と詞が魅力のヴォーカリスト・茶太さん、的確な先見力と行動力で僕らを導いてくれるプロデューサーの高橋さん……他たくさんのスタッフが、新しい「終わりのクロニクル」の魅力を生み出すため、全力で自分達の持つ力を注いでいます。 完成まで相変わらず、戸惑いと、躊躇いと、迷う制作の日々は続くと思いますが、それでも「終わりのクロニクル」の持つ力を「音で描く」という先を信じて、一歩ずつ前に踏み出す力を作品に注いでいけたらと思います。音だけが持ちえる、原作「終わりのクロニクル」とは違った「強い力」を、楽しんで頂けたら幸いです。 |
■ onoken (作・編曲) Official Site メロディに最もこだわりを持つ作・編曲家。14歳にて作曲を始めて以来サイトは400万HITを超え、楽曲は国内最大インディーズ音楽サイト「MUZIE」にて各部門ランキング1位。テクノ部門では1位~7位を独占し話題を呼んだ。現在は家庭用ゲーム機やTVCM、その他多数のアルバムに楽曲提供を行う。ピアノやオーケストレーションなどの美しさを得意とする一方、テクノやロックなどのハードな一面も備え、様々なジャンルに精通している。自身のオリジナルアルバムSwell Stringsは、現在 iTunes Music Store にて販売中。 ■ 茶太 (作詞・ボーカル) Official Site ウィスパー系や電波系等、数々のゲーム主題歌を担当。TVアニメCLANNADのED曲「だんご大家族」を歌う。2008年4月にミニアルバム[空の記憶」を、6月にはメジャーアルバム「ちゃたのわ」をリリース。歌う幸せをかみ締めつつ、「ウサギキノコ」名義でおかしなクリーチャーをマスコットに自主制作活動を展開中。 ■ 三澤 秋 (作詞・ボーカル) Official Site 声と歌詞に独自の世界観を持ち、メロディアスな激しい曲調から透き通る切ないバラードまで幅広く歌唱するボーカリスト。PS2ゲーム「I/O」のOP主題歌で活動を開始。さまざまなコンピレーションCD等に参加しながら精力的に活動を展開中。さらに、今冬には「秋の空」名義で初のオリジナルアルバムをリリース予定。 ■ Rio (企画・構成) 1998年ゲーム制作会社に入社。企画として6年間滞在した後、2004年よりフリーのプランナー・ディレクターに転身。以降数々のコンシューマゲーム・携帯ゲームの企画・ディレクションを担当する傍ら、フリーの作曲家morriganと、イラストレーター杉壱の3人で創作ユニット「WAVE」を結成し、創作活動を行っている。近年ではゲームの企画だけでなく、片霧烈火★オーケストライブ!の企画補佐/進行/運営の担当や、癒月ファーストメジャーアルバム「START!」の構成・監修・プロデュースを行うなど、ゲームというジャンルに縛られず、様々なエンターテインメントを生み出す、文字通り「フリー」なクリエイター。2008年7月、急逝。享年29歳。 |