冨田明宏 責任編集メールマガジン 『パトス・ハメ』
No.0004-3 / 2009年3月7日 発行
INDEX
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1. 犬が読むコラム - 責任編集後記的な何かが前に来たら - text: 冨田明宏
2. 対談連載 DJ TECHNORCH×冨田明宏『同人音楽』最終回
3. リレー・コラム『人生を変えたアルバム』 text:riya(eufonius)
4. 特別寄稿『ワイトの私的幻想音楽鑑賞術』 text:Wight
(Barbarian on the groove)
5. 今号のパトス盤 - PICK UP DISC! - text: 冨田明宏
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3. リレー・コラム『人生を変えたアルバム』 text:riya(eufonius)
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初めましての皆さん、そうでない皆さんもこんにちは。eufoniusのriyaです。
私の人生を変えたアルバム、と言う事で。まず1枚目、ドビュッシーの管弦楽曲全集(マルティノン指揮)です。これは短大在学中に、友人に紹介してもらって初めて聴きました。この中に入っている、「管弦楽のための映像」という曲。私のクラシックに対するイメージを一新させた曲です。
それまでクラシックと言えば、モーツァルトやベートーベンの超有名な曲や、ドビュッシーならピアノ曲の「月の光」くらいしか知らず、繰り返し聴いたりする事はあまりありませんでした(決してそれらが好みではないという訳ではないです…汗)。
それが、クラシックってカッコイイ、もっと色々聴きたい!と思わせてくれたんです。菅野よう子さんや坂本龍一さんが好きな方は、きっと気に入ってくれると思います。実際当時聴いた音源は違うCDなのですが、今から聴きたいと思われる方に薦めたい一枚として。是非マルティノン指揮のものを。
さて、2枚目。自分のとこのCDで恐縮ですが(汗)、eufonius の「eufonius」。eufonius がデビューするきっかけが詰まったCDです。ここから eufonius は始まって、今に至ります。作ったのはもう随分前の事ですが、今聴いてもらっても全く違和感がないと思います(笑)。現在は「eufonius+」として再販中ですので、是非聴いてみて下さい。
合わせて、自主制作の最新盤「メトロクローム」、TVアニメ「空を見上げる少女の瞳に映る世界」のOP主題歌「アネモイ」、そして来月発売のPCゲーム「canvas3」の主題歌「この声が届いたら」も是非是非よろしくお願いしますっ!サイト「frequency⇒e」にも遊びに来て下さいね、お待ちしています★
それでは〜。
frequency⇒e (Eufonius)
http://www.eufonius.net/
4. 特別寄稿 : ワイトの私的幻想音楽鑑賞術
- ある種の「響き」・グロッソラリア・そしてLisa Gerrard -
text : Wight (Barbarian on the groove)
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皆様、はじめまして。「Barbarian On The Groove」のワイト/wightと申します。
今回は私自身も拝読させていただいている「パトス・ハメ」に、なんと書き手としてお誘いいただきまして、光栄の至りです。
よく考えてみれば「なぜ私が!?」との疑問が浮かぶのですが、パトス・ハメ創刊にあたり書かれた冨田氏の所信表明の中の、「ひとつの対象について、なぜそこまで語ることができるのか。それを目で見て感じてもらうだけでも、自分としては満足です。」
という一文を思い出し、合点がいきました。今まで冨田氏とお会いして話してきた内容の9割は、「こんなことを真剣に語って一体どうなるっていうんだろう…」というようなことばかりだった気がするのです(笑)。そんなアレな私の姿が逆に氏の心に残り、光栄にもここにお呼びいただける事になったのだろうなぁと勝手に納得している次第です。お見苦しい点も多々あるかと思いますが、最後までお付き合いいただけたら幸いです。
さて今回は、明日の天気から果ては宇宙の成り立ちまで、日々とめどなく思索を続け、迷宮を彷徨い続けている私に差し伸べられる天啓のごとく、冨田氏よりお題をいただけました。「私的幻想音楽鑑賞術」ということですが、もちろん万人に通用する「術」を伝授できる能力など私には全くありませんので、つれづれなるまま超個人的に「幻想音楽」なるものについて、想いを巡らせてみたいと思います。
音楽の定形態としては存在しない筈の「幻想音楽」なのですが、困ったことにある種の音楽を聴いた時、「あぁ、なんて幻想的な音楽だろう…」というような感覚を覚えることは確かにあります。何をもって人は(私は)それを「幻想的」と感じるのでしょうか…。
まずは「幻想/イリュージョン」という言葉自体について考えてみると、比較的現実に基づいて想像される事の多い「空想」とは違って、「幻想」は全く非現実的で、しかもそこには能動的な要素が少ない気がします。要するに人知を超えたようなものによってもたらされる感覚とでもいうか。山頂で雲海と遭遇してしまった瞬間とか、まぁ、そんな感じでしょうか。
ということは、ある種の音楽を聞いて「幻想的だ〜」と感じた時は、上記のような場合と同じような感覚になっているってことなんですが、では次に、どういう音楽がそういう感覚をもたらすのかを考えてみます。
そこには何か空間的なものというか残響音というか、ある種の「響き」のようなものが常に存在しているように思えます。独特な和音構成による「響き」にそれを感じることもあるでしょうし、残響音的な音の「響き」による時もある。で、そういう「響き」を多く含む音楽というのはたいていの場合、その「響き」によって、非現実的な、それでいて諍い難い魅力を持った風景を見せてくれるんですよね。それこそがまさに「幻想的」なるものの正体かもしれない。
いわゆる宗教音楽が「幻想的」な感覚をもたらすのはまさにこれで、教会旋法とよばれる独特の和声の響きや、教会という響きの場で鳴らされる残響音があいまって、より幻想的に聞えるというようなことなのではないかなと思ったりもします。まぁ、多くの宗教音楽は先述の「人知を越えたものによってもたらされる感覚」ってのをより感じさせるように作られている面もあるわけですから、当然といえば当然かもしれませんが。
でもこれは宗教音楽に限ったことではなく、ある種の「響き」をもってさえいれば、音楽ジャンルは特に関係ない気がします。独特な和音構成という面で言えば、人に(私に)幻想的と感じさせるものはジャズでも沢山あるし、エレクトロニカやラヴェルなどの印象派の作品にも同様のものを感じたりすることはある訳です。そういえば大好きなジャズピアニスト、Stanley Cowell のアルバムでその名も「Illusion Suite - 幻想組曲」なんていうのもありました。
このように、ある種の「響き」を持っている音楽というのは、人に(私に)強く「幻想的」な感覚・心象風景をもたらす訳ですが、その声だけで世界を「幻想的」にしてしまうという恐ろしい人がいます(笑)。その人の名はリサ・ジェラルド(Lisa Gerrard) 。
アラサー以上の年代の方は、「なつかしー!Dead Can Dance の人ね!」と思われるかもしれません。名前を聞いたことない方でも映画「グラディエイター」とか「ブラック・ホーク・ダウン」とかをご覧になっていればその恐るべき歌声は耳にされていることでしょう。もしくは「Delerium でサンプリングされてたヤツね」って思うクラブ系の方もいらっしゃるかも。そうです、その人です。
その歌声を一度でも耳にしたことがある方なら、きっと同意してもらえると思うんですが、先に曲があってそこに歌を歌っているというよりも、声が発せられたあとに補足するように曲が出来たんじゃないの?って思うくらい、その声だけで幻想的なサウンド・スケープを現出させちゃう人なんですね。
イギリスで音楽活動を始めたんだけどオーストラリア人で、本人曰く「中近東」的なものを意識していたそうなんですが、一聴すると賛美歌にも聞えるという、ほんと独特な方で(笑)。もっとも独特なのはそれだけではなくて、ほとんどの歌が言語(英語とか仏語とか)ではない、いわゆる「グロッソラリア /glossolalia」といわれるような、言語としての意味を全く持たない音節の連なりで歌われていたりもします。
冷静に考えるとそれって単に「メチャクチャなだけじゃん!」って話ですが(笑)、その歌声が非常に「幻想的」に聞えてくるということは、彼女が自らの歌声にある種の「響き」を(しかも意識的に)持たせることに成功している稀有な人だからなんじゃないか?って気がします。
そんな彼女のベスト盤「ベスト・オブ・リサ・ジェラルド」が日本盤には15分程度のドキュメンタリーDVD付で発売になっています。サントラなどの幻想的なものが好きな方にはオススメです。興味があったら聞いてみてください。気に入るかどうかの保障はできませんが…(笑)。
それにしても、「幻想音楽」というキーワードで想いを巡らせてはみたものの、これって「幻想音楽」というくくりに限らず、自分にとって魅力的と思える音楽全般に言えることなのではないかという気がしてきました。とはいえ、同じように風景を描き出す魅力的な音楽でも、「幻想音楽」とはちょっと呼べないものもやはりある訳で、ではそれは一体何ぞや…?などと考え出すと別の扉が開いてしまいますね(笑)。
名将は引き際を心得る、ということで続きはまたの機会にでも(笑)。
最後までお付き合いいただき、有難うございました。
・Barbarian On The Groove
http://www.astronotes.jp/bog/
5. 今号のパトス盤 - PICK UP DISC! - text: 冨田明宏
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■ 眩惑のドリーム・ポップ・アルバム
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ASOBI SEKSU / HUSH
発売日 : 2009年02月11日
型番 : TOCP-66859
発売元 : Polyvinyl
販売元 : EMI JAPAN
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けしからんバンド名だったりするのですが、それで敬遠してしまっては勿体ない。こんなにも“ドリーム・ポップ”という言葉が似合う作品もそうないなぁ、なんて思いを噛みしめながら繰り返し聴いてしまう。すっかり愛聴盤です。
N.Yを拠点に活躍するアソビ・セクス。前作『Citrus』も何かの雑誌媒体でレビューを書いた覚えがあるのだが、その時はここまで心が揺り動かされなかったハズ。白昼夢の中にいるような眩惑的なシンセ・サウンドと、ピンクの靄のように煙るフィードバック・ノイズ。
ビョークと比較されることの多い、囁くような繊細なヴォーカルが魅力のYUKIは、沖縄出身の日本人女性。英語と日本語をシームレスに使い分け、世界に一つしかないポップ・ミュージックを想像している。シューゲイザー好きもすっかり虜にしてしまうこの才能、ぜひ触れてみて!
■ 世界的名声を勝ち得た日本産轟音インスト・バンド
フルオーケストラで新境地へ!
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mono / Hymn To The Immortal Wind
発売日 : 2009年03月04日
型番 : HECY102
発売元 : Human Highway Records
販売元 : バウンディ
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このアルバムはぜひ、幻想音楽好きやファンタジー小説好き、映画音楽好きにも愛聴してもらいたい作品です。mono と言えば、これまでにワールド・ツアーを何度も何度も繰り返し、インスト・ポスト・ロックというジャンルにおいて世界的認知を獲得してきた日本のバンドで、いわゆるファンタジーの要素とはかけ離れた世界で音楽を志向してきたバンドなのですが、この作品は違うのです。
リーダーの taka 曰く、「もう曖昧なことを繰り返す音楽はまっぴらごめんだ!」ということで、本作にはインストながらすべての楽曲にファンタジックなストーリーが存在し、“運命”、“輪廻”を巡る物語が、生のフルオーケストラの荘厳なサウンドで語りまくる、途轍もないアルバム!
ストーリーを手掛けたのはハリウッド映画の現役脚本家だし、録音エンジニアはスティーヴ・アルビニだしで、これ以上にないほど美しく、これ以上にないほど生々しく、エモーショナルな作品に仕上がっています。mono 史上最も勇敢なチャレンジが詰まった意欲作です。
■ インディー・ロックの雄、遂にメジャー・デビュー
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ORGE YOU ASSHOLE / ピンホール
発売日 : 2009年03月04日
型番 : VPCC-82267
発売元 : VAP
販売元 : VAP
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最後のインディーズ作品となった「しらないあいずしらせる子」は、昨年の国産ロックでは筆者の愛聴盤だった。日本的な郷愁感に合わさった、USインディー由来の煽情的でヒリヒリとしたバンド・サウンドの妙味は、何回食っても食い飽きない爽やかな深みがあった。
何が良いって、センスが良い。この妙なバンド名は、元ドラマーの腕にモデスト・マウスのメンバーが冗談で書いたものらしい。そんなエピソードひとつとってもカッコイイ。
そんな彼らも遂にメジャー・デビューだ。何か変化しちゃったりするのかなぁ、なんて思ったけれど、驚いたことに、逆に初心に立ち返るような切れ味の良いギター・アンサンブルを聴かせてくれる。ああ、ひと安心。前作同様、プロデュース・チームとして石原洋&中村宗一郎が参加していることからも分かるが、恐らく一発録りだろう。
スピード感の中に心地よい緊張感が漲り、ダイナミックなグルーヴがドカドカと鳴り響くのは、エンジニア中村宗一郎の決まり手である。脱力系ボーカルのユルユルとした心地良さも引き立ち、メジャー・デビューを飾るに相応しいシングルとなった。
■ 近年のキャラソンでは出色の逸品
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桂ヒナギクstarring 伊藤静 / HINA(初回限定盤)
発売日 : 2009年02月25日
型番 : GNCA-1719
発売元 : ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント
販売元 : ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント
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舐めてかかったら骨折しますよ。しょっぱなからZIZZ STUDIOの村上正芳の澄み切ったギター・ポップ・ナンバー「Steppin’」で幕を開けるあたり、本気さが伺える。田中公平の地に足の付いた重厚なロック・ナンバー「Power of Flower」も良いし、90年代のガールズ・ロックをそのまま甦らしたかのような「スクールDays」も、サウンド・プロダクションの一つ一つがツボを突いてくる。
しかしこれは、世代的なものかもしれないなぁ、と少し思ったり。10代や20代前半の学生君たちが、新しさを感じる音かは未知数ではある。しかし中には、四分打ちのビートに乗せて切ない心情を歌い上げるイマドキな楽曲もちらほら。そして、何より、伊東静の爽やかにエモいヴォーカルが素晴らしいし、この若干の不安定さが余計に儚さを引き立てている。
アルバムの中で最も気に入ったのは、田中公平作曲の「NOTICE」と、「あしたのわたし」という曲。特に「NOTICE」は、なぜこのキラー・トラックを前半に持ってこなかったのかが疑問なくらいに珠玉のメロディである。
コンセプト・アドバイザーとしても参加している作詞家、くまのきよみの業モノとも言うべき、歌詞によるキャラ性の立て方も見事。今後のキャラソン・アルバムの指針的な作品になるのではないだろうか。あとキャラソン・アルバムでは、『ルイズBEST』が改めて良かった。
■ 初音ミクのオリジナル楽曲アルバムとしては、記念碑的作品
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supercell feat.初音ミク / supercell(初回限定盤)
発売日 : 2009年03月04日
型番 : MHCL-1493
発売元 : SME
販売元 : SME
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テクノウチさんとの対談でも散々話題にしましたが、初音ミクとミクに纏わる音楽は、今のうちに国内での評価を固めておかないと、後々に勿体ない事をした!と後悔することになるような気がするのである。たった一音しか発せないが、今日本で最も愛されているシンセ・ソフト=初音ミク。その無垢で純心な声とキャラクター・イメージから、多くのコンポーザーが心奪われていったわけだが、今日は初音ミク界隈で最もポピュラリティーのある作曲家 ryo の名前だけでも、覚えて帰って下さい。
彼は「メルト」一発の破壊力によって、ネット上でもっとも有名で、もっともクールな作曲家の一人となった。ピアノを基調としたバンド・サウンドの精緻なプログラミング、そしてダイナミックなレイヤーが施された、分厚くヘヴィなテクスチャー。
サウンドの緩急、メロディの抑揚を持たせつつ勢いはそのままに、怒涛のようなテンションでサビに流れ込むこのアンセミックなナンバーは、切実な恋心を、声を振り絞り歌い上げる健気なミクの絵姿と相まって、まるでキューピッドの矢のごとくリスナーのハートを撃ち抜いていった。
“ブラック★ロックシューター”と名付けられた少女のイラストに、ryo が言葉と音を与え生まれた名曲「ブラック★シューター」他、ニコニコ動画を中心に人気を博した彼の楽曲を凝縮。本作が、初音ミクの新たな快進撃を告げるファンファーレとなりえるのか、注目したい。
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音楽ライター冨田明宏
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